高齢の親を持つ方とお話をしていると、よく出てくる話題が、「なんだか最近親が怒りっぽくって……親子喧嘩ばかりしているの」というもの。
まさに、「自分のことだ」と思った方も多いのではないでしょうか。
高齢により、親が怒りっぽくなる→怒りっぽく対応されると、こちらも大人でいられなくなる→実の親子だから遠慮がない→顔を合わせるたび親子喧嘩をしている→イライラが募り、ささいなことでも腹が立ってくる→さらに親子喧嘩が増える……という負のループに陥っていませんか?
相手が怒りっぽくなり、喧嘩が増える……これって思春期のお子さんを育てたことがある方は経験があるのではないでしょうか。よく似た現象ですよね。
ということは……自分が子供のころは、親と親子喧嘩をし、我が子が思春期をむかえると、我が子と親子喧嘩をし、さらに親が年を取ればまた親と親子喧嘩をし……そして自分が年を取れば、我が子と……。
なんということでしょう。
一生をかけて、親子喧嘩をぐるぐるぐるぐる繰り返すことになってしまいます。
親子喧嘩……ストレスですよね。無駄なエネルギーですよね。
今回は、高齢になると、なぜ怒りっぽくなるのか、そんな親とどう付き合っていけばいいのか、解説していきたいと思います!
目次
高齢になった親と親子喧嘩が増えるのはなぜ?

高齢になった親と親子喧嘩が増える主な原因として、以下の3つのことが考えられます。
1.親が高齢により怒りっぽくなっている
一番の原因が今回のテーマであるこちら。親が高齢になって怒りっぽくなっているから。
親がささいなことでイライラしているから、こちらも腹が立って、ついつい言い返してしまうから。というケースを多く耳にしますね。
2.親が高齢により忘れっぽくなった
次に親が高齢になり忘れっぽくなることで増えた親子喧嘩。
同じことを何度も聞いてくる、忘れ物やなくしものが目立ってきたときなど。
これはむしろ子である娘や息子の方がイライラしているパターンです。
昔はしっかりしていた親が高齢になり、忘れっぽくなってきた。
「さっき言ったじゃない!なんで忘れているの!同じこと何度も言わないで!」など、年のせいだとわかってはいるけれど、いざ自分の親の物忘れや、失敗を頻繁に目の当たりにすると、ついついイライラしてしまいますよね。
声に出して怒ってしまい……後から自己嫌悪…なんてことも。
3.もともとの性格があわないことも
もともと子供のころから性格があわず、親子喧嘩も多かった方の場合。
大人になり家を離れ、心も体も親と距離を置くことで関係性を保っていたが、親が高齢になり顔を合わせる機会が増えた、数十年ぶりに同居をしたなどから、やっぱり性格があわず喧嘩になってしまう……というケースも多いですね。
高齢になると怒りっぽくなるのはなぜ?

では、高齢になると怒りっぽくなってしまうのはなぜでしょう。
実は「高齢になって怒りっぽくなった」というのは身体的な老化現象の1つです。
もともと怒りっぽい要素を持っていても、若いころは感情を制御し、コントロールする機能が働きますが、その機能する力が老化により弱まってきます。
具体的に言うと、前頭葉が委縮するという老化現象で、感情のコントロール力が鈍り、昔よりも怒りを抑える機能が働きにくいということです。
とはいえ、高齢により怒りっぽくなった!という方の多くは、もともと怒りっぽい要素はもっています。
老化によりその怒りの感情を抑えにくくなっているという現象です。(アルツハイマー型認知症などの認知症による症状となるとまた話は別です)
家族である配偶者や我が子の前では、身内ゆえにさらに怒りの制御ができにくくなります。
親子喧嘩の対処法

怒りっぽくなった親……もう本っ当に腹が立つと思います。
もちろん腹は立つのですが、親子喧嘩が増えることで自分のストレスも溜まっていきますよね。
親子喧嘩の対処法は以下の2つです。
老化現象が原因で怒りっぽくなっている親と
- 同じ土俵に立たない(スルースキルをあげる)
- 否定しないこと
1.同じ土俵に立たない(スルースキルをあげる)
実際家族から怒りの感情をぶつけられると、「なんでそんなことで!」と腹が立ちます。
冷静に対応できる人の方が少ないと思います。
ですがそこで、老化現象が起きてしまっている親と、同じ土俵に立って、怒り返さないことです。
「ああ、今お母さん(お父さん)は老化現象により言いたくもないことを言っているんだ……」と考えます。
何か腹の立つことを言われても、言い返す前に、間をあけて一呼吸を置きます。
言い返すその瞬間が怒りのピークです。
間をあけることで、少し自分自身の怒りの沸点も下がり冷静な言葉が出てきやすくなります。
目の前にいると、どうしても言い合いになってしまう場合は、親がいない場所(部屋)に移動して自分自身をクールダウンさせるといいですね。
2.否定しない
人は、自分自身を否定をされると嫌な気持ちになりますよね。
親子関係に限らず、対人トラブルを起こさないためにこの「相手を否定しない」を意識することはとても有効的です。
さらに、年を重ねていれば、自分の長い人生で培ってきた価値観というものが若者より遥かにゆるぎないものになっていますし、否定(指摘)されたことを受け入れて改善するということは、お年寄りにとって、無理に近いほどむずかしいことです。
(10年の介護士生活で、高齢のご利用者に否定をしていしまい、トラブル……という職員をたくさん見てきました。)
「そうだねーそうなんだねー。」と赤の他人のおばあちゃんやおじいちゃんに絡まれたときくらいのスルースキルを身に着けていきましょう。
腹は立ちますが……親が怒っているとき、言い返してしまうと火に油。
一旦言葉を飲み込み「そうだよね」と言ってみてください。共感の言葉からはじまる会話は、なかなか否定の言葉は出てきません。
それでも「そうだよね」なんて、言えるほど冷静になれない!(怒)という時は、さきほどもお話ししたように、一旦その場を離れ、親の見えないところで自分をクールダウンさせましょう。
介護士として気をつけていたこと

ちなみに、私は介護施設で10年ほど勤務経験のある介護福祉士ですが、認知症の方にもそうではない方にも、内心「なんと理不尽な……」という言葉をかけられたことが何度もあります。
私が介護士として高齢者と関わる際に、介護技術以上に心がけていたことがあります。
それは今回お話ししたとおり、「絶対に否定しないこと」「同じ土俵に立ち感情的にならないこと」でした。
たとえば、理不尽なことで立腹され、サービス外のことを要望されてしまう時でも、「それは違いますよ」なんていうと余計にヒートアップさせてしまうのは目に見えています。
そのため、不愉快にさせてしまった事実には共感し、謝ります。
「そうですよね。不便ですよね。申し訳ないです」と。
それから共感はしても「ここは、こういう理由でこのサービスは受け付けられないんです」としっかり理由まで説明をし、だけど理不尽な要望には応えない。を徹底。
そのおかげもあってか、この10年大きなトラブルや、このご利用者と上手くいかなかった……ということはありませんでした。
(仕事だから、他人だからこそ客観的にとらえ、徹底できました。)
反対に同じ土俵に立って怒り返したり、突き放したりして、余計に怒らせてしまい、利用者さんとの関係性に亀裂が入った職員を何度も見てきました。
親子の場合
親子の場合、親子関係という間柄で、さらにプライベート空間で起きるトラブルなので、このスルー力を発揮するのはとても難しいことです。
ですが、一度意識してみてください。
若い自分が老化現象が起きてしまっている親と同じ土俵に立たない、スルー力、否定しない、これだけで、かなり親子喧嘩が減るのではないかなと思います。
まとめ
今回は、高齢になって怒りっぽくなった親との親子喧嘩についてお話ししました。
「同じ土俵に立たないこと」とお話ししましたが、私たちだって人間です。
これから先絶対に親子喧嘩をしてはいけないということではありません。
ときに余裕がなく怒り返してしまう日があってもいいと思います。
ただ、意識するのとしないのとでは、全然ちがってくると思いますので、親子喧嘩を減らしたい!という方は、今回お話しした「同じ土俵に立たないこと」「スルー力」「否定しないこと」をすこし意識して親御さんと接してみてはいかがでしょうか。
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